ケルトの民
ケルトの民が生み出したドルイドは、自然に親しみ、その加護を受ける人々だというイメージがあります。
そして、森の賢者として古くから崇拝されてきました。けれど、ドルイドは本当に森に親しむ人々だったのでしょうか。
我々の、もしくは創作ファンタジーからの勝手な思い込みではないのだろうか・・。この真相を知る為に、過去にさかのぼってドルイドについて調べてみる事にしましょう。ケルト民族は、古代ヨーロッパに広く住んでいた人々でした。それこそ、アイルランドからトルコまで、イベリア半島からロシアの平原まで。けれども彼らケルトの人々の血脈は、ほとんど失われてしまいました。最初はローマによって。ローマ共和国は、ケルト民族が住んでいた地域をことごとく占領し、ローマ共和国の一部としました。
ローマによって「ガリア」と呼ばれた人々は、全てケルト人でした。彼らは、ローマに征服され、文化習俗と共にローマ化して、ついにはローマに吸収されてしまったのです。このようにして、ケルト人の文化はほとんど失われてしまい、その名残が残っているのは、アイルランドなど、ごく一部にすぎません。
ヨーロッパ大陸に住んでいたケルト人(彼ら大陸のケルトは、アイルランドなどに住む島のケルトとは、微妙に異なった文化をもっていたといわれています。)の文化は、ほぼ完全に失われてしまいました。多くのヨーロッパ人は、ケルト人の血を多かれ少なかれ引いていますが、自らをケルトの子孫と考える人々はごく少数です。
ケルトの血は、ヨーロッパの諸民族の中に吸収されてしまったのです。これらケルトの消滅の中でも、最も規模が大きく、ケルト人に致命的だったのが、ローマ共和国によるガリアの征服です。ローマ人は、ローマの支配を受け入れる限り、その地における神々の信仰を、そのまま保持する事を許します。それどころか、しばしば外来の新しき神として、ローマに迎え入れることすらありました。にもかかわらず、ドルイドの信仰は、ローマの弾圧する所となりました。それというのも、ケルト人がローマに対する敵がい心を忘れる事がなく、その心の支えとなったのが、ドルイドたちだったからです。ケルト人は、ドルイドの魔力と、生まれ変わりへの信仰を持って、ローマの支配に何度も反抗しました。
ハンニバル戦争〔第二次ポエニ戦争B.C.218〜201〕のときも、ハンニバル〔カルタゴの将軍〕を助けて戦ったのはケルト人たちでした。また、ケルト人だけでも、ウェルキンゲトリクスの反乱〔B.C.52年〕では、かのユリウス・カエサル〔Gaius
Julius Caesar B.C.100〜40〕と真っ向からぶつかり、現在のフランスを真っ二つに分ける大戦争を引き起こしたのです。ケルト人についての記録は、ほとんどがローマ人によるものです。このため、ローマ人には理解できない風習を持つケルト人を、野蛮人と位置付けた記録しか残っていません。しかし、ケルト人は野蛮人などではありません。既に鉄器を作り出し、戦車を利用する、きちんとした文明を持つ民族でした。ただ、ケルト人の信仰が、未開のシッポを引きずったものであることは否定できません。そしてその原因は、転生思想という・・死んだ人の魂が、別の人〔時には、動物や植物になることもあります〕に生まれ変わってくると信じる思想です。魂の不滅を信じる思想の一つで、死んでもまだ先があると考える事で、現世の辛さに耐えることが出来たり、命を惜しまず蛮勇を振るうことができるような考え方だったのです。転生思想そのものは、未開でもなんでもない比較的進んだ信仰でもしばしば見られるものです。しかし、ケルトでは、転生思想が命の値段を安くする方向で働いたのです。どうせ転生するのだから、無謀な戦いで戦死しても気にならない。転生するのだから、神に人間を生贄にしても、次の転生が早くなるだけしかなかったのです。ケルト人にとって、生贄となって死ぬのは喜ばしい事であったらしく、多くのものは自ら望んで生贄になったと考えられています。カエサルも『ガリア戦記』で、こう記しています。ガリアの部族はみな宗教に深くうち込んでいて、そのために重病人や危険に身をさらすものは生贄として人間を犠牲にするか、犠牲にする事を誓い、その犠牲を執り行うものとして僧侶を使う。人の生命には人の生命をささげなければ、不滅の神々はなだめられないと考えているから同じ犠牲を公にも決めている。或いは大きな像を作って、その細枝を編んだ四肢に生きた人間を詰め、火をつけて焔でまいて人を殺す。盗みや強奪やその他の罪で捕まったものの刑罰は不滅の神々にとりわけ喜ばれると思っている。しかし、そんな人間がいない場合には、罪のないものまで犠牲にする。実際、ガリアの田園地帯で最大の聖域の一つであるリブモン・シュル・アンクル〔フランス・ソンム県〕には、20〜30歳の人骨を何千人分も積み上げた、1.6mの立法体形の塚が残されています。
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