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エノク

エノクのデーモン 〔Enochian demons〕

エノクのデーモンには主要な二つのグループがあります。最初の流れは黙示文学の『エノク書』に直接由来しますが、この書物はおそらくキリストの誕生より一世紀前に著わされ、わずか数部が現存しているだけです。エノク書の断片はシュンケルスの著作に書きとどめられています。それ以後・・エチオピア語版とスラヴ語版が発見されているものの・・この二つは後代の伝統と信仰に属しているものらしいと考えられます。初期のリストが真正のエノクのものであり、後代のものは偽エノクと呼べるかもしれませんが、両者ともに現代のデーモン学に情報をもたらしているのです。明らかに初期キリスト教会で高く評価されていながらもエノク文献の最初の流れは3世紀末には人気を失っていました・・ネッカムのアレクサンデル(12世紀)とその同時代人であるビンゲンのヒルデガルトは、引用したり文書を利用したりするほどに、エノクの考えによく通じていました。この最初の流れは、文明をもたらすため、地上界に「堕ちる」ことに同意した天使の話を細大もらさず伝えています。このような天使の数は膨大だが、今に残っている指導者の名前の中に、すぐれたサムヤサの名前があるほか・・他の天使たちの名前が、アキビール、アマザラク、アナネ、アリジアル、アルメルス、アサエル、アザラデル、アジビール、アズキール、バルカヤル、バトラール、ダネル、エルトラエル、ヨミアエル、ラムエル、サメウェル、サラクヤル、タミエル、トゥレル、ウラカバラメール、ザウェベとしてあげられています。こうした名前の一部と現代の秘教との繋がりについては、【イスキン】を見ていただけるとよいでしょう。エノクのデーモンの第2のグループも、エノク書に由来するといわれることがあるものの、このリストが作り出されたのはエノク書が知られていない時期であって・・・
〔初期の教父たちに知られていたエチオピア語版が再発見されて翻訳されたのは1838年です〕・・・デーモンの偽のグループではないにしても・・、明らかに‘偽’の名前なのです。この偽エノク文献が近年になって復活したのは、もっぱらジョン・ディーとその助手の著作や、エリファス・レヴィのロマンティックなデーモン学に対する関心がつのった為であって、今なお占星術師および学者としてヘルメスに等しい評価をうける、エノクという人物にまつわるものだとされています。
リン・ソーンダイクが指摘しているように、【創世記】においてエノクが365年生きたと報告されている事実は、エノクを太陽年や星に結び付けています・・
したがってエノクは、ヘルメスが秘教伝承で持ってその名を高めたように、デーモン学伝承で持って名声を確立したといえるのです。堕天使にかかわるエノク書の全般的な見解は(2つの伝統・・双方に残っています)、重要な秘教の概念を少なくとも1つ取り込んでいます。
人間の女に欲望を持って妻とした堕天使の数であるといわれています(一部の文書ではその数200とされています)。この交わりから、人類は文明の技術を数多く学び取ったのです。この古代の伝統に由来する断片的な概念が、ソロモンの【レメゲトン】といった文書で、デーモンの『術』や『力』として数多く伝わっています。エノク書のリストにおいて、デーモンの名前は様々に異なっているにせよ、マクリーンの記録するものは、『エンキリディオン』のリストに影響を及ぼした文献や様々なオリュンピアの例のリストに挙げられる名前や、通俗的なイギリスのグリモアに由来するものであって、これらすべてのデーモン学文書が結局はデーモン文献としてのエノク書の流れに発していることを示しています。