アポロンAPOLLON 代表的な簡略文は索引の方を見て下さい。 二度の追放アポロンはオリュムポスから二度追放されている。一度目はポセイドンやヘラ、アテナと結託してゼウスへの謀叛を企てた為である。二度目はゼウスの盟友であったキュクロプス達を矢で射殺した為である。その度にトロイア城壁の建設やアドメトス王の家畜の世話などの試練を果たし、アポロンは再び自由の身となった。多様な機能アポロンは調和の神として音楽と詩を発明し、人間や神々を魅了する。ヘルメスに送られた竪琴やマルシュアスの生皮を剥ぎ入手した笛などを使用する。アポロンのお陰で詩人は整った韻律の詩句を作れる。パルナッソス山でムーサイに踊りを教え、〔アポロン・ムサゲテス〕「ムーサイの指導者」と呼ばれるようにもなった。身体の手入れが巧みなアポロンには一点の汚れも寄せ付かず、〔輝ける者〕、(ギリシア語でポイボス)とも呼ばれ、太陽熱の神として、植物を芽吹かせ、果実を熟させた。また、ヒュペルボレイオイ人にとってアポロンは夏を連れてくる夏の神でもあった。アポロンは太陽同様に恐ろしい力を持ち、ペストすら齎し、戦いの神として、トロイア戦争にてトロイアの敵アカイア人に敵対した。アポロンの好む動物は狼、鹿、白鳥、カラス、イルカである。その神木は月桂樹で、巫女のピュティアは月桂樹の葉を噛んで忘我状態になる。 数々の恋愛神々の中でも最も美男であるアポロンは数々の恋愛をした。多くのニュムパイが彼を誘惑した。アリスタイオスを生んだキュレネ、ヘリオトロープ(向日葵)に帰られてしまったクリュティエ、月桂樹に変身したダプネ、コリュバスたちを生んだタレイア、オルペウスを生んだといわれるウラニア、アスクレピオスを生んだコロニス、イオンを生んだクレウサ、泉に変えられたカスタリア、リノスを生んだプサマテ、恐ろしい罰を受けたカッサンドラ、死後ヒヤシンスに変えてもらったヒュアキントス、糸杉に変わったキュパリッソスなど多くの女性である。また、ムーサイや人間もアポロンを愛した。アポロンとダフネ―――どのようにしてアポロンは、月桂樹を自分の木にしたかある日、小さな愛の神エロスは、川の土手に座って、自分の矢をおもちゃにして遊んでいました。それは、随分小さな矢でした。その矢には、金のやじりの物と、鉛のやじりの物とが在りました。矢はどれもかわいらしくて、別に、たいした傷を人に負わせる力があるようには見えませんでした。 すると、ちょうどその時、太陽の神のアポロンが、この川の土手を通りかかりました。 アポロンは、この日、ピュトンという名の、恐ろしい暗闇の大蛇と戦った、その帰り道でした。そして、この大きな蛇を殺すのに、アポロンは、不思議な力を持つ金の矢を使ってきたところでした。ピュトンを退治したという、華々しい勝利の喜びで、大変得意になっていたアポロンは、エロスが小さな弓と矢をいじっているのを見ると、おかしがって言いました。 「おうい、そんなに小さな矢で、何ができるのだ?」 エロスはこれを聞くと、酷く気分を悪くしました。けれども、何も言わずに、自分の小さな矢を持って、パルナッソス山の頂へと飛んでいきました。 エロスは頂につくと、草の上に座って、矢筒から、鉛のやじりがついている矢を取り出しました。そして、何か良い的は無いかと辺りを見回しました。そのとき森の中を、ダフネが歩いてきました。ダフネは、川の神ペネイオスの娘でした。ダフネが側を通ると、眠っていた花が頭を持ち上げ、一時にぱっと開く、といわれたほど、美しい水の精でした。 エロスは真っ直ぐにダフネの心臓をめがけて、鉛の矢を射掛けました。この矢は、ダフネに怪我はさせませんでした。けれども、ダフネの心に、恐れの気持ちを注ぎ込みました。ダフネは、何が怖いのかもわからずに、ただ夢中で逃げ出しました。 これを見ると、いたずらっ子のエロスは、矢筒から金のやじりの矢を抜き出して、今度は、アポロン目掛けて射掛けました。この金の矢は、アポロンに、一番先に見た者を好きにならせる力を持っていました。そして、このとき、アポロンがまず見たのは、ダフネでした。川の神の娘ダフネは、美しい金色の神を後ろになびかせながら、走っていたのです。 アポロンは、 「待ちなさい。何も怖がる事はないんだから。」 と、逃げていくダフネに呼びかけました。 けれども、ダフネは止まろうとしません。 アポロンは、後を追いかけました。けれども、アポロンが足を速めれば速めるほど、ダフネは、もっと速く走りました。 そして、ダフネの恐れの気持ちは、いよいよ強くなるばかりでした。なぜなら、あの小さな、鉛の矢は、まだ、ダフネの心臓に突き刺さっていたからです。ダフネは、走りつづけて、父神の川の土手まで来ました。もう疲れてしまって、これ以上は走れません。 「お父さん、助けてください。」 と、ダフネは、父のペネイオスに向かって叫びました。 ペネイオスは、その声を聞きつけました。そして、アポロンが追いつかない内に、すぐ様、娘を木に変えてしまいました。それは、いつもつやつやした葉を持ち、ほのかな黄色い花の咲く木でした。 アポロンが追いついてみると、川の土手の上に立っていたのは、もう、あの川の神の娘ではなくて、一本の美しい木でした。アポロンは、もうダフネに会えないのだ、という事を知って、大変悲しみました。 これは皆、あの小さな鉛の矢が巻き起こした、悪戯だったのです。この木が、ダフネが残していった、ただ一つの物でしたから、アポロンは、この木を大事にしました。そして、自分の神殿の側には、この木を植えてもらいたいといいました。アポロンは、いつも緑のこの木の葉で冠を作って、ダフネの思い出のために被っていました。 この木は、今でもギリシアに沢山あって、人々は、「アポロンの冠」と呼んでいます。 アファイア伝説さて、アイギナ島においてゼウス・パンヘレニオスの山に向かう、その途中にアファイアの聖所があり、このアファイアに関する詩をピンダロスがアイギナの為に作っている。だがクレタ島の人たちの主張では――アファイア伝説は実は彼等の方が本家本元なのだ――、ピュトン(デルフォイの大蛇)殺しの穢れからアポロンを清めたカルマノルの息子にエウブウロスなる者がいて、そのエウブウロスの娘のカルメとゼウスとの間にブリトマルティスという女の子が生まれた。彼女は走ったり狩りをするのを楽しむ女の子で、アルテミス最愛の友であった。ところが、彼女を恋したミノスの手を逃れて、魚の捕獲用に放置されていた網〔ディクチュア〕の中に身を投げてしまったという。アルテミスは彼女を神としたが、クレタ島の人々だけが尊崇するのではなく、アイギナ島の人たちもブリトマルティス様が自分達の島にも顕現なされたと主張して、尊崇しているのである。アイギナにおける同女神の添え名はアファイアといい、クレタでは「漁網の女神」〔ディクチュンナ〕という。アポロンという言語<アポロン型>という形容詞は、中庸、均衡、調和の取れたものを現し、<ディオニソス型>に対立する。普通一般の言葉で<アポロン>と言えば完璧な美青年を指す。<アポロチョウ>という非常に美しい蝶は<パルナシアン>とも呼ばれる。 ラテン語名の「アポロ」はアメリカの月面探検の宇宙開発計画の名に採用された。 |