カバラ
錬金術や様々な神秘学の基となたとまでいわれる秘密の知識、それこそがカバラです。
いや・・占星術、人相学、哲学にまで広い影響を及ぼしている西洋思想の奥に潜むものこそカバラなのです。カバラとは、ヘブライ語のQaboll〔受け取る〕に由来する言葉で、「伝統によって受け入れられた智恵」を意味する言葉です。カバラの智恵は、人間が作り出したものではありません。神より与えられた神聖なものなのです。
そして、それを与えられた人物こそ、ユダヤの民をエジプトより救い出し、海を二つに割って脱出路を作り出したモーセなのです。ユダヤの神秘学者によると、モーセは聖なるシナイ山に三度登りました。最初の40日で神より十戒を授かりました。
次の40日で律法の魂を授かりました。そして、最後の40日で律法の魂の魂、即ちカバラを授かったといわれています。このカバラの智恵は、旧約聖書のモーセ五書『創世記』『出エジプト記』『レビ記』『民数記』『申命記』に記されています。
もちろん、カバラの大教典と呼ばれる本にも、その奥義は書かれています。『セフェール・イェツィラー』〔sefer
Y'izira:創造の書〕、『セフェール・ハ・ゾハール』〔sefer ha zohar:光輝の書〕、『アポクリファ』〔Apocrypha:旧約聖書外典〕です。『セフェール・イェツィラー』は、3〜6世紀に書かれたといわれています。アブラハムの著とされていますが、実際にはラビ・アキバとラビ・ハララビの手によるものだといわれています。ラビとはユダヤ教の聖職者のことで、厳密に言えば違うのですが・・
牧師や神父に似たものだと考えてくれればよいです。この本には、セフィロトの樹とその解説、ヘブライ文字の数秘学的研究、そしてゴーレムの製造について書かれています。『セフェール・ハ・ゾハール』は、2世紀のラビ・シメオン・バル・ヨカイの著とされていますが、実際には13世紀のラビ・モーゼス・デ・レオンが書いたという説が有力です。一説には、ヨカイの著が長年の間に誤記されたり、誤解されたりしていたのを、デ・レオンが再編集したのではないかとも言われています。神や魂の輪廻と永劫回帰、宇宙の進化などについて書かれた本なのです。書物だけではありません。カバラの秘術は象徴図版によっても表されます。『セフィロトの樹』〔生命の樹ともいいます〕が、その代表です。しかし、これだけの根本資料が公開されているのに、なぜカバラの秘術が公開のものにならないのでしょうか。それは、カバラの秘密が暗号化されていたからです。書物を表面上読んでも、確かに意味は通じています。しかし、それで理解できるものは、あくまでも表面上の意味でしかないのです。真の秘密は、その文章の中に暗号で隠されているのです。
そして、この暗号を解読しない限り、カバラの秘術を手に入れることは出来ないのです。これは、非常に優れた方法です。わずかな人間だけが秘密を独占していたのでは、その人が不慮の事故などで死んでしまうと、秘儀伝授が行われず、知識は失われてしまいます。しかし、カバラの書は広く出版されているのですから、カバラの秘術が失われる事はまずありえません。また、教師も弟子に細々とした知識を教える必要がありません。暗号の解き方さえ教えてやれば、後は弟子が自力で学ぶことができるからです。さらに、不幸にして暗号の解き方が失われたとしても、長い年月のうちには、自力で暗号を解きカバラの秘術を復活させてくれる人物が現れるはずです。ただ、表面上きちんとした意味のある文章であり、なおかつ暗号を織り込んだ文章を作るのは、非常に困難です。
そのため、このような文書が、読みにくい文章で出来ているのは我慢しなければなりません。だが、このような秘術を、中世ヨーロッパは知りませんでした。ピコ・デラ・ミランドラやギョーム・ポステルら学殖ある門外漢がユダヤの至聖所に入り、ヘブライ語の文献をラテン語に訳出するまで、秘術はユダヤ人だけのものだったのです。
カバラは、キリスト教徒に10のセフィロト、【智恵】の32の道、【知性】の50の扉、聖書に登場しない多くの天使の名前、神の72の名の宝庫などを教える事になったのです。しかし、このカバラの秘術がヨーロッパにもたらされるや、隠秘学の領域では決定的な影響力をもつことになりました。
16世紀以降の事です。また、18世紀以降の近代魔術にも、大きな影響を与えています。
これらキリスト教徒の行うカバラをキリスト教的カバラとして、区別する向きもあります。あまりに影響が大きすぎ、一時はカバラという言葉がほとんど隠秘学(≒オカルト)と言う言葉と同じ意味に使われた時期さえあり、人相術から錬金術まで、本来関係のない分野まで所かまわずカバラの知識を導入しようという流行が起こったほどです。
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