古き魔女
Witch
それでは、キリスト教の妄想の基となった魔女とはいかなるものだったのでしょうか。それは、太古の巫女の末裔である。ドルイド教やその他の異教の巫女たち。
特に、太母神の巫女やシャーマンの巫女たちが、魔女なのです。彼らは、本来ヨーロッパで崇拝されていた豊饒神(多くは女神です)を祀っていました。
しかし、キリスト教の布教によって、彼ら古き神々はその地位を追われ、崇拝されなくなっていきました。
しかし、それでも彼らの持つ薬草の知識は役立っていたし、異教の祭儀もジンクスや民間信仰などに姿を変えて生き残りました。キリスト教会は、これら異教の祭儀をなくそうと試みましたが、結局完全に無くすことは出来ず、いくつかの部分で妥協しました。その最大のものは、マリア信仰と、聖人信仰です。
本来男性神であるキリスト教が、大地母神への信仰と折り合いをつけるために妥協したものが、大地母神崇拝に代わるマリア信仰でした。また、それぞれの事物に神がいて守ってくれるという、多神教的価値観を持つ民衆を取り込む方法として、聖人というものがつくられ崇拝されました。人々の目から隠されてきたヨーロッパの異教の名残は、そこかしこに見つけることが出来ます。ケルトのサァオイン際など、その典型です。太陰暦で一年を半分に分ける区切りの日、5月1日と11月1日が祭りの日です。特に10月31日から11月1日にかけての真夜中は、世界でもっとも魔力が満ちる日であるとされています。
魔女の時代になると、ケルトの伝統は忘れられたものの、魔力の日という概念だけが残り、サバトに最も適した日とされるようになります。また、キリスト教にも取り込まれて、万霊節〔ハロウィン〕となりました。古き魔女の使う魔法は、古き神々の魔法です。シャーマニズムと呼ばれる魔法を受け継いだのが、魔女であるからです。古き魔女の魔法はシャーマンの魔法に近いと考えてよいでしょう。
占い
魔女と占いというと、直接結びつかないようにも見えますが、実際には最も頻繁に用いられた魔女の魔法は占いです。といっても、占星術のような複雑な占いではありません。水占いや炎、亀甲占いなど、中世には既に時代遅れとなっていた占いです。
もちろん、古臭い占いだから当たらないというわけではないです。
ただ、都市では、錬金術師や魔術師が古代の文献を基に研究を行っている時代に、祖先から受け継いだ口伝だけで占いを行う魔女では、金持ちや権力者にはアピールしません。実際、魔女に占ってもらおうとするのは、田舎の貧しい農民たちなどであったのです。
豊穣の祈り
魔女はデメテルやバッカスなどの豊穣神に使える巫女であるから、作物の豊作や、家畜の多産を祈るまじないを司っていました。あとには、この裏返しとして魔女は不作や飢饉を起こす事ができるとされましたが、本来は豊穣をもたらすのが魔女の力でした。同様に不妊の女性に子供を授けたり、病を治すのも、魔女の役目だったとされます。
守り
これは何より狼からの守りでした。中世ヨーロッパでは田舎に住む人間にとって、狼は家畜を襲うだけでなく身の危険ともなる、恐ろしい害獣であったのです。その後、守りの範囲は少しずつ拡大し、疫病除けや火事除けなどのお守りも、魔女は作るようになりました。
|