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現代の魔女

現代でも、愚劣なキリスト教の魔女狩りをそのまま鵜呑みにしている者は存在します。ドイツのとある村で、エリザベート・ハーンという中年女性が魔女の疑いをかけられました。
飼っていた犬が使い魔だというのです。村人は彼女を避け、子供たちは石を投げました。
近所の男は、彼女に魔法をかけられたから、お返しに殴り殺してやると脅しました。
そして、本当に一人の男が、彼女の家に放火しました。家は全焼し、飼い犬たちは焼け死に、彼女も大火傷を負いました。
紛れもない放火と殺人未遂です。これは中世の話ではありません。1976年に起こった事実なのです。もちろん、現代にも魔女はいます。しかし、彼女たちはキリスト教とは何の関係もありません。彼女たちは、キリスト教の言う魔女ではなく、古き魔女、つまり古代の豊饒神の巫女の末裔を任じています。つまり、異端ではなく異教なのです。この運動を、新異教主義〔ネオ・ペイガニズム〕といいます。このような運動が登場したきっかけは、20世紀まで魔女を禁止する法律が生き残っていた為です。
イギリスでは1944年に魔女禁止令に違反したかどで処罰される人が現れました。このような法律は直後に廃止されましたが、これをきっかけとして魔女というものの正体がなんであるかを冷静に見極めようという運動ができました。また、1899年にチャールズ・リーランドが『アラディ・魔女の福音』と言う書物を書いていたことが、大きな影響を与えました。この書によるとヨーロッパには古代宗教が存在し、その主神はディアナでした。
ディアナは、自らを光と闇に分離し、光を弟のルシファーとしました(ルシファーは光の神であるが地獄の悪霊でもあります)。彼女はルシファーに魅せられて交わり、娘のアラディアを生みます。このアラディアこそ、第一の魔女であり、魔女の守護神であるというのが、その内容です。これらの過去を踏まえて、イギリスの魔術師ジェラルド・ガードナーは、自分が現代に生き残ったカブン〔魔女の団体〕の一員であると主張し、魔女の教えを何冊もの本にして出版しました。さすがに、ガードナーの主張は疑問視されました。いくらなんでも、あの魔女狩りを生き残ったカブンがあり、現代まで続いているとは思えなかったからです。だが、ガードナーの著書をカブンの伝統の継承とは信じなくても、古代の魔女の伝統を復興させたものとして受け入れる人は多かったです。こうして、現代に新たな魔女たちの集団が生まれてきたのです。異教の復興という意味では、一種の魔女宗教といえるかもしれません。この魔女宗教は、古代の豊饒神〔ディアナやデメテルなどのギリシアの大地母神や、
フレイヤなどの北欧神話の大地母神たちです〕を崇拝するものでした。なんと、ギリシア神話の神々が、この時代に復活したのです。そもそも、彼女たち大地母神は、ギリシア神話などが成立する以前から、ヨーロッパ古代の母系社会に脈々と受け継がれてきた
大地の主神である女神たちが、ギリシア神話などに取り込まれたものです。その意味では、ヨーロッパで最古の宗教の復活と考えていいでしょう。そして、この大地の女神を主神とする教義、古代の母系社会の系譜を継ぐものの見方は、現代のフェミニズムと結びつきました。
そして、自然保護運動などとも近しい関係にあります。最古の思想と最も新しい女権思想が、
女性というキーワードで結びついてしまうところが非常に興味深いところです。彼女たちは、自らを【ウィッカ】〔Wicca〕と呼び、キリスト教のいう魔女と一線を画しています。邪悪な黒魔術は使わず、全なる白魔術のみを使用します。魔女たちの祭礼〔サバト〕は、通常年8回あります。祭りは、自然に帰るという意味合いから、裸で行うカブンも多いらしいです。
ユール
11月20日か21日に冬至を祝います。魔女宗教では、冬至こそが1年の始まりなのです。
オイメルク
2月1日か2日に聖燭節があります。これをインボルクともいいます。この日には、新入会者のイニシエーションが行われることが多いです。
エオストル
3月20日か21日に春分を祝います。春分の祭りは、豊穣の祭りでもあります。
ベルーテン祭
4月30日で、いわゆるワルプルギスの夜〔五月祭の前夜〕に行われます。
夏至の祭り
6月21日には夏至を祝う祭りがあります。
ラマス
8月1日には収穫祭が行われます。
秋分
9月20日か21日には秋分を祝います。
サムヘイン
10月31日、キリスト教に取り込まれてハロウィン〔万霊節〕となっている祭りがあります。
おもしろい事に、この祭りは地球の地域ごとに時期が異なります。例えば南半球では夏冬が反対なので、それらの祭りはちょうど反対の日付に行われています。冬には植物が茂り、夏は乾燥してかれてしまうカリフォルニアでも、それに対応して祭りの日が変わります。このあたりは、現代の魔法らしく合理的になっています。
ハーブ
現代の魔女は、薬草をハーブとして使用することが多いです。特に、紅茶に入れたり、乾燥させて芳香剤として使用するなど、穏やかな使用法が多いです。また、材料も、あまりに奇異なものは少なく、身近な野草や花などの持つ力を利用する事が多いです。ここまで来ると魔法なのかそうでないのか、区別をつけにくい所です。現代では(特に先進国では)医師法や薬事法などが存在するので、あまり魔法薬として使用すると逮捕されてしまうからではないかと思われます。
占い
現代の魔女も、占いはよく行います。ただし、世界の命運を左右するような大きなことを占う事はほとんどなく、個人的な未来を占うことがほとんどです。魔女たちの思想からして、政治がらみになりがちな世界の未来を占う事は、好まれないのです。