錬金術の理論
錬金術の源泉は多く、様々な起源をもつ多種の術がひと括りで錬金術と呼ばれています。
しかし、その中で有力なものが4つあるので紹介しましょう。
【ヘルメス学】
一種の哲学思想であるヘルメス学は、その思想の実践として錬金術を行うものです。
その基本は、ヘルメス・トリスメギストスの残した書物の研究にあり、特に『エメラルド・タブレット』が重要視されました。この短い文書の中に、錬金術の奥義が寓意の形で示されていると考えられたからです。ヘルメス学には、いくつかの基本概念があります。大宇宙〔マクロコスモス〕と小宇宙〔ミクロコスモス〕の対応もその一つです。大宇宙とは我々の周囲にある宇宙の事・・小宇宙とは人体の事です。ここにおいて、錬金術は占星術と結びついています。
【三原質・四大元素・七金属】
パラケルススによれば、世界の資源は【原一体】〔ユニテ〕、すなわち万物の第一質量〔イリアステル〕です。これが、女性的原理と男性的原理に分かれます。この両原理の結合によって、カオスとイデアスが出来ます。こうして、質量〔ヒューレー〕が作られました。この質量が光の作用で、三原質〔硫黄・水銀・塩〕に分かれました。
|
第一質量
|
硫黄
|
男性
|
能動
|
熱
|
不揮発性
|
|
水銀
|
女性
|
受動
|
冷
|
揮発性
|
特に、硫黄と水銀が物質の正反対な性質を象徴するものとして、錬金術において重要となります。ただし、注意しなければならないのは、硫黄や水銀と呼びますが・・これは現実の硫黄や水銀とは異なるということです。硫黄に代表される物質の形相を決める力、水銀に代表される物質の質量、塩に代表される物質の運動、これらが結びつく事であらゆる物質は作られるのです。更に、四大元素と三原質との関係も説明する事が出来ます。
|
第一質量
|
硫黄
|
土
|
可視的・個体的状態
|
|
火
|
隠秘で微細な状態
|
|
塩
|
第五元素
|
エーテル
|
|
水銀
|
水
|
可視的・液体状態
|
|
風
|
隠秘で気体である状態
|
そして、錬金術師は7種の金属を区別していました。その中でも、金と銀は完全な金属であり太陽と月に結び付けられ、その他の金属は不完全で惑星に結び付けられていました。
|
金属
|
惑星
|
|
銅
|
金星
|
|
鉄
|
火星
|
|
錫
|
木星
|
|
鉛
|
土星
|
|
水銀
|
水星
|
|
銀
|
月
|
|
金
|
太陽
|
錬金術師によれば・・全ての金属は同類でありその形相によって異なるだけなのです。空気中で容易に参加される金属で、イオン化傾向が大きく、鉄・銅・鉛・亜鉛などの事を指し・・貴金属といわれる金・銀・白金族金属などの酸やアルカリに冒されにくく、美しい金属光沢を持つ貴重な金属の反対を意味する卑金属とは金属が病んだ状態なのであり、その病を治せば金属は金や銀になるのです。
|
主な錬金術記号
|
|
金〔太陽〕 
|
錫〔木星〕 
|
気 
|
|
銀〔月〕 
|
硫黄 
|
昇華 
|
|
銅〔金星〕 
|
塩 
|
硫酸塩 
|
|
鉄〔火星〕 
|
水 
|
金属 
|
|
水銀〔水星〕 
|
火 
|
砒素 
|
|
鉛〔土星〕 
|
土 
|
アルカリ 
|
|
一種の速記法のようなもので、体系化されたものではありません。7つの金属の記号以外は、錬金術師によって様々で、同一人物でさえ同じ事柄に違う記号を使うこともあるとされてます。
|
【神秘的錬金術】
錬金術は金を作るための方法ではないと考える人々もいます。それでは、彼等にとって錬金術とは何なのでしょうか・・それは、霊的黄金を得るための術です。つまり、自らの魂を高め【最高智】を得る事こそ錬金術の目的であるというのです。これらの人々にとっても、賢者の石を求める実験は重要です。ただし、彼等に言わせると、これらの実験は自らを高める修行の一環でしかなく・・秘儀を受けた者にとって【賢者の石】を発見するとは、天啓によって得た【智慧】によって【自然】の秘密を見出す事なのです。
【アルス・マグナ】
錬金術の最も野心的な望み・・それは自ら神に等しくなることにあります。これを、【大いなる秘法】〔アルス・マグナ〕もしくは【王者の法】といいます。最高度の錬金術によって、達人は超人もしくは神的存在になります。禁欲修行を行いつつ、賢者の石を作り出します。この賢者の石を作るという現世の作業は、そのまま自らの魂を高める霊的作業に対応しているのです。『聖檀の上の雲』の著者のドイツ貴族で錬金術師のフォン・エックハルツハウゼンは、こういっています。
復活は3つの次元にわたって行われる。第一に理性の復活、第二に意志の復活、最後に身体の復活である。
第一、第二の復活を行ったものは多いが、身体の復活まで至った人は少ない
ここまで至った錬金術師は、賢者の石によって天使の肉体を与えられ、〔知識〕〔力〕〔不死〕の3つの恩寵を得ます。そして、望むままに神と交わり、神と一体化できます。彼は、生きたままで救われているので、最後の審判を受ける必要すらないのです。しかし、更に先はあります。かの錬金術師が次に求めるものは、〔宇宙〕の再生です。堕落した世界を再生し、救いをもたらすのです。
|